4)骨粗しょう症に使用されるお薬 

              ~新しい骨粗しょう症の薬を含めて~

 

岸本整形外科 院長 岸本 成人(きしもと なりひと)

 

 骨粗しょう症の治療の基本は運動とカルシウムを含む栄養が第一ですが、次にビスホスホネートをはじめとする薬物治療が重要です。薬はきちんと骨折予防に効くことが証明されていることが必要です。以前からあったビタミンKやカルシトニンのほか、はっきりとした効果が証明されていないものも少なくなかったのですが、10年前にビスホスホネートが登場した頃から骨粗しょう症の治療が大きく変わりました。
 

 ここ数年でビスホスホネートも種類が増えましたが、さらに女性ホルモン系のサームや活性型のビタミンD、さらに副甲状腺ホルモンのテリパラチドが登場し、薬の選択の幅が広がり、強力に骨粗しょう症の治療が出来るようになってきました。しかし、いずれの薬も長所・短所があり、その作用するメカニズムを良く考えて、個々の患者さんにあった薬を使い分けたり、併用したりすることが必要となります。
 

 骨粗しょう症の患者さんを診た時に基本となるべき薬はやはりビスホスホネートです。ビスホスホネートが一番強力に骨を作り、骨折を予防するということの証明がしっかりなされているからです。しかしビスホスホネートは飲み方の制限や寝たきりの人・嚥下困難の人には使えず、消化管の副作用や、さらには長期使用した場合の顎骨壊死や非定形性骨折など重大な合併症があると言われ、必ずしも使いやすいお薬とは言えません。そのために以下に述べます別の薬の使用を考える必要があります。
 

 閉経後の女性ならばまずサームです。サームは、普通の女性ホルモン製剤では乳がんの危険性などがあったために開発された女性ホルモン類似構造の薬です。サームは骨密度増加という点ではビスホスホネートに劣るのですが、飲みやすいのが利点です。ただし血栓症のある人などには使えません。エルシトニンは骨密度の増加や骨折予防には効果は少ないことが分かってきましたが骨粗しょう症における痛みには一番即効性があります。ビタミンD・ビタミンKは飲みやすく、昔からある薬ですが、最近注目されている骨質も改善することが分かってきました。活性型のビタミンDの新薬エディロールは筋肉にも働き、転倒予防にも効果があると言われています。ただし、高カルシウム血症には注意が必要です。
 

 骨折の既往のある人は2度3度と骨折する可能性が高いため、ビスホスホネートだけでなく骨質を改善するといわれるサームやビタミンD・Kとの併用が勧められます。これらの薬物はビスホスホネートとの相性がいいのです。ビスホスホネートが骨折予防効果を出すまでには半年くらいかかりますが、これらはもっと早く効果が出るとされています。既往歴に多発骨折がある場合などは最も強力なテリパラチドの適応ですが、値段が高く注射しないといけないのが欠点です。

 

講師紹介
大阪大学医学部卒、 阪大病院、大阪厚生年金病院、大阪警察病院等を経て 市立堺病院整形外科部長。その後岸本整形外科開設。専門は膝関節鏡視下手術を初めとする関節外科。特に膝半月板の処理、超音波で治す難治性骨折。日本整形外科学会認定医、日本リハビリテーション学会会員、大阪臨床整形外科医会理事インターネット担当、日本臨床整形外科医会IT委員