1 関節リウマチってどんな病気?

                        NTT西日本大阪病院 房間 美恵

関節リウマチとは
関節リウマチとは関節にある滑膜を病変の主体とする慢性炎症性疾患です。
進行すると骨・関節の破壊が起こり、日常生活動作(ADL)が低下します。

患者さんの背景
日本では70万人以上の患者さんがいると言われています。
男女比は、男性1:女性3~4の割合。
発症年齢のピークは30~50歳台ですが、幅広い年齢層の方に発症します。

関節リウマチの症状
(A)関節症状・・・朝のこわばりや関節の痛み・腫れが出現します。進行するにつれ軟骨や骨の破壊がおこり、やがて関節の変形が進み、日常生活に支障をきたすようになります。

(B)関節以外の症状・・慢性の炎症性疾患ですから、発熱や全身倦怠感などの症状が見られます。炎症がつづくと貧血や腎障害などが起こることがあります。また間質性肺炎という感染症とは異なる肺炎が見られる場合もあります。

関節リウマチの診断や活動性の評価に役立つ検査
(A)血液検査:白血球数、CRP、血沈、MMP-3、抗CCP抗体、リウマチ因子など

(B)画像検査:レントゲン、MRI、超音波など

治療の目標
(A)疾患活動性の改善
関節腫脹や圧痛などの症状や炎症反応の改善を目指します。
疾患活動性の評価としてはDAS28という方法をしばしば用います。
(DAS28:腫脹関節数、圧痛関節数、患者総合評価、CRPあるいは血沈より算出)

(B)関節破壊の進行の抑制
レントゲンで評価します。関節破壊の進行を抑制することを目指します。

(C)機能的な改善
MHAQなどの評価表を用いて評価します。日常生活動作の改善を目指します。

 


 

 2 抗リウマチ薬について    

                      日生病院  藤原弘士

 

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 3 リウマチの新しい薬 ―生物学的製剤―

                        NTT西日本大阪病院   前田恵治

生物学的製剤とは、炎症や関節破壊などを起こす分子の働きをさまたげる薬を、遺伝子工学の力を使って作った、バイオ医薬品です。病気(関節リウマチ)の原因とも言える分子(サイトカイン 特にTNFαおよびIL6)をピンポイントで押さえ込むため、効果が大きく、副作用もおこりにくいのです。腫瘍壊死因子(TNFα)を標的とした、レミケード(点滴)、エンブレル(皮下注)、ヒュミラ(皮下注)があり、IL6を標的としたアクテムラ(点滴)があります。
これらの薬剤の登場により、メソトレキセートとの併用が多いのですが、多数の人で関節破壊の進行が押さえ込まれますし、骨びらんと言って、骨が侵食される状況を阻止できることがわかってきました。
このことより治療の目標が単に関節の腫れや痛みをとることから、関節破壊の進行を抑え、寛解を目指すことに変わってきています。
一方、肺炎などの感染症をはじめとする副作用には注意が必要です。TNFαもIL6も、そもそも感染防御など、日頃の抵抗力維持に、必須の物質でありますので、抑えすぎると、副作用としての感染症が起こりやすいと言えます。
本日はこのような生物学的製剤が、どのような効果があるのか、どうして効果があるのか、どのような副作用に注意すべきか、なぜ副作用がおこるのかなどについて、わかりやすく説明します。

 

レミケード

エンブレル

ヒュミラ

アクテムラ

構造

キメラ型抗体

TNF受容体+Ig

完全ヒト型

ヒト化抗体

標的

TNFα

TNFα

TNFα

IL6受容体

投与法

点滴静注

皮下注射

皮下注射

点滴静注

使用量

3(~10mg/kg

1025mg

40mg(~80mg)

8mg/kg

間隔

(4~)8週ごと

週に2

2週ごと

4週ごと

併用

MTX必須

単独(MTX推奨)

単独(MTX推奨)

  単独

市販

20037

20053

20086

20084

 

 


 

4 リウマチの治療と手術

                                住友病院 大澤 傑

 リウマチ治療としてメソトレキサートが基本的な治療薬として使用されるようになり、さらに生物学的製剤も使われるようになったことで、リウマチの手術は膝の人工関節手術を除いて減少傾向にあります。しかし、薬物治療が強力であるため、いままでにない手術必要例が出てきました。 現在のリウマチ手術の考え方について説明します。
 一般的な手術適応は関節症状が出てきたときに考えることになります。関節症状とはリウマチによる腫れや痛み、動きにくさ(可動域制限)、あるいはぐらつき(不安定性)をいいます。この症状で日常生活が制限され、リハビリや装具などを使用しても効果が不十分なときに手術が選択枝となります。
 もうひとつは予防的な手術です。骨が突き出ることで皮膚がうすくなり、あるいはタコができてしまうとばい菌がはいりやすくなります。このとき生物製剤を使っていると、骨がくさったり、全身にばい菌が散らばり命とりになることもあり、予防的に骨を切り取ります。もうひとつは首の骨がリウマチでぐらつき脊髄を圧迫するときです。ひどくなると手足が自分の意志で動かなくなり、呼吸も出來なくなるため予防的に首の骨を固定する手術をします。
 以上をまとめますと、現在のリウマチ手術は1.歩行が困難になってきたときにする下肢の人工関節や固定術、2.腕や手の動きがわるくなり日常生活が困るときにする上肢の手術、3.予防的にする首の手術や手足の感染予防手術などであります。

 


 

 5 関節リウマチクリニックでの対応

               しんとう整形外科・リウマチクリニック  神藤佳孝

1、 はじめに
医学の進歩は目覚ましく、リウマチ治療も例外ではありません。ここ十年で、リウマチ治療は一変したといっても、過言ではないでしょう。特にリウマチの治療が、痛みを取ることしかできなかった時代から痛みを取ることはもちろん病気を進行させない、あるいは一部の患者さんでは完全にリウマチを治してしまえる時代へと変化しました。その原動力となったのが、抗リウマチ剤・生物学的製剤などの薬物療法の進歩といえます。しかし、一般の方々にはなかなかよくわからない点も多々有ろうかと思います。当クリニックは、開業4年目とまだまだ未熟ではありますが、リウマチの治療が地域の開業クリニックでは、どのように行われているのかを、一般の方々にできるだけわかりやすく説明することを一番の目的に発表の準備をしてまいりました。不備な点もあると思いますが、ご容赦下さい。

2、 本日のお話、7つのポイント!
1、当クリニックの位置とクリニック概要
2、クリニックと病院では何が違うのか?(下記1)
3、地域に根ざす開業クリニックの役割とは?(下記2)
4、当クリニックで治療しているリウマチ患者さんの特徴とは?(下記3)
5、クリニックだけでは治療できない患者さんをどのように治療しているか?
6、患者さんができる、リウマチ科受診のコツとは?(下記4)
7、おまけ:接骨院、鍼灸はどう?サプリメントは?(下記5)

3、 ポイントの解説
1、診察・採血検査・レントゲン・治療・使うお薬など、基本的にはクリニックと病院で差はありません。決定的な違いは、クリニックには入院設備が無い、一部の特殊な検査、例えばMRIなどの設備が無いことです。
2、リウマチの検査・診断・治療を適切に行うことです。判断が難しい場合は、他のクリニックや病院のリウマチ専門医に相談し、適切に対応します。また、リウマチで人工関節や脊椎手術を要する患者さんを、適切な専門病院へ紹介します。
3、年齢は、初診時平均65.2才(24-86才)、現在は、67.5才です。性別は、男性20人、女性100人(1:5)病気が始まってから、当クリニックに来られるまでの期間はなんと平均5年9ヶ月もか   かっています。薬による治療で、副作用もありますがリウマチがよくなっています。
4、できる範囲でよいのですが、リウマチの経過を紙に書いてみてください。
何時ごろから症状があるか、はれや痛いところはどこか?(絵でも可)、リウマチで治療受けた事があれば飲んでいた薬、その副作用、手術など、家族や親戚にリウマチ・膠原病の人はいるか、リウマチ以外の病気、飲んでいる薬、アレルギーはあるか。
5、まずは、医師に相談それから鍼灸・整骨院へ!サプリメントは、有効なこともありますが、リウマチでは医学的有効性は示されていません。副作用もあるので注意が必要です。